1970年代、インドを旅した大坪は、路傍にたたずむヒンドゥー教の小さな石像「リンガ」と、そこに花を撒いて子孫繁栄やさまざまな幸福を祈願する人々を目にし、その美しさに陶然とするほどの衝撃を受ける。花首をもいで捧げるという風習も、いけばな作家として枝や茎を含めて花材を扱ってきた大坪には鮮烈であった。それ以来、自身のいけばな表現として、リンガから着想したインスタレーションをたびたび制作している。
大坪にとってリンガ作品は、自分の願いや挑戦を込める「祈り」の作品である。大型のリンガ作品は、制作に人手を借り、多くの人に見られる。「その人たちも、自分の祈りを込めるかもしれない」と大坪は語る。
ミュンヘン美術協会(KM)展
で制作した『リンガ・ミュンヘン』に続く本作では、上海から近い江蘇省から運ばれた大量のしだれ柳を主材として使用。リンガ内部に配したのは、会場Power Station of Artのスタッフから寄贈いただいた衣類である。
約5か月の会期のあいだ、枝は緩やかにくたびれていく。足元では古い花が土に溶け、その上には会場スタッフの手により新しい花が重ねられていく。
上海の人々の繁栄と平和に合掌。
写真展示
Selections from the Photographic Archive of Kosen Ohtsubo,
Presented by Christian Kōun Alborz Oldham,
and in cooperation with
Kosen Ohtsubo, Ryusei-ha, Empty Gallery, Ensō House, and Kunstverein München
エントランスフロアで行われたクリスチャン・光雲・アルボルズ・オールダムによる大坪光泉写真アーカイブの展示。龍生華道会が撮影した中判フィルムを高解像度でデジタル化したものを中心に構成した。